2024年末に公開されたアニメ映画『劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊 最強の軍師』。(以下、『軍師』)
公開から1周年が経とうとする今、全国で再上映をしているようです。
良いタイミングなので、公開当時に書きかけて放置していた長文感想をまとめて供養していきたいと思います。
忍たまと私
ぶっちゃけ、「子どもの頃によく見ていたな〜」程度でした。(OPとEDに見覚えがあることから、16〜17期頃だと思います)
15〜20年程前の話なので、詳しいことは何も覚えていません。
ふんわり覚えていたのは「乱太郎とよく一緒にいる優しそうな先輩(たぶん伊作)」「きり丸は孤児。バイトに明け暮れているのもその生い立ちから」くらいでしょうか。他、上級生の何人かに見覚えがあるくらいかな。
当時から滝夜叉丸が好きで、彼だけは強烈に覚えていました。好みが変わっていなさすぎてウケる。
その後、オタクとして通ることもなくここまで来ています。(キッズアニメ自体は好きなのにオタクとして通ってこなかったの今思うと不思議かも)
なので、基本的には誰でも知っているレベルの知識しかありません。
他、双忍は双子では無い※等のインターネットでよく見かける偏った知識しかないような。※ずっと双子だと思ってた
なお、映画公開の少し前からTLで立花仙蔵にハマるオタクが(なぜか)続出しており、よくFAが流れてきてたんですけど忍たまのキャラだと気づかず……映画を見て気づきました。うっすらと見た目だけ覚えていた市女笠の女性が女装した仙蔵かもしれない、という衝撃の事実もセットで。そんなことある?ある……。
映画を見るきっかけ
キンドラで映画館通いしていた時期に予告を目にして興味を持ちました。
そういえば忍たまの映画ってあんまり聞かないな?と思ったら『軍師』で3作目……まじ?
Twitterの相互フォロワーに忍たま出戻り勢が思った以上にいたため、ネタバレも早々に流れてくるであろう気配を察知。後の項目でも触れますが、忍たまの大友人口多くない?キッズアニメだとニチアサと同等かそれ以上にオタ人気あったりする……?
あえて予習はせず、「昔見てたな〜」のテンションで年内に1回目を鑑賞しました。
予告通り見応えのある良質なアニメだと思います。さすがご長寿アニメの劇場版、といったところか。
『軍師』のおもしろさについて
ストーリーに関してはこちらの予告で期待した通りの面白さでした。
ここは映画ブログらしく、映画としてよくできてるなあ~と感じた部分を中心に語っていこうと思います。
アクションシーンの配分がちょうどいい
まず、見応えのある作画!
TVシリーズよりもキャラの等身を上げ、動かしやすくしたと聞いていますがこれがめちゃくちゃ良い。
たしかにTV版を見ていると『軍師』はみんなスラッとしてるな〜と感じるのですが、違和感がない。
いつもの絵柄のままバキバキアクションしているように見える。
劇場版もTVシリーズと同じ亜細亜堂が担当している、というのもあるんでしょうか。
また、上級生や卒業生一人一人に得意武器があることや、プロ忍と忍たまの力量の差をしっかり描写しているのも◎。戦闘シーンのバリエーションが広がっており、殺陣のシーンも華やかです。
流血表現も少しあるものの、子どもやゴアが苦手な人でも見られる程度に抑えてあるのも良いな、と思いました。
シリアスなお話だからこそ、殺伐とした雰囲気をちゃんと描こうという意図を感じます。
描写や演出が文学的なのが印象的
度々挟まる戦災のシーンにて、流血を彼岸花、死体を案山子や藁人形と悲鳴で表現したり、禍々しい月の演出が見られました。これは鳥肌が立ちましたね。ちびっこもたくさん見に来る映画でつらく苦しいシーンをどう描くか?という問題に対するひとつの正解を見た気がします。
「なんかわかんないけど怖いシーン」というのは誰が見ても伝わるし、物語が進むにつれてそれが天鬼(土井先生)のつらい記憶だと察することができるようになってる。
その一方で、戦災がどういうものか、ある程度知識がある大人にとっては嫌な想像を掻き立てるシーンになっています。直接描かないからこそ、いくらでも生々しい想像が頭をよぎる。そんな怖さがある。
こうした“戦乱の恐ろしさ”を子どもに配慮しながら婉曲的に表現して観客に解釈をある程度委ねることで、“戦国時代の解像度”をより鮮明にしているようにも見えます。
また、ちょっとした小物も時代考証を踏まえて配置されているように見えました。(詳しい人が見たらいろいろ出てくると思う。)
終盤で八宝斎たちが食べているお菓子が南蛮菓子だったのも、さりげなく“戦国時代”の質感を感じさせる演出だと思います。
ソングシーンの使い方が上手い
さて、上記の通りいつもの『忍たま』よりもシリアスかつリアルな戦乱を描く『軍師』ですが、『忍たま』のコミカルさも健在です。
なかでも、とくにすごいなと思ったのが八方斎達が踊るシーン。
べつにミュージカルが目玉というわけでもない映画で、物語の展開を崩さず、元々ギャグが許される世界観を上手に使っています。
シリアスなシーンの合間に挟まれているため、ちびっこを飽きさせない工夫なのかな?と思います。 ただ、ミュージカルシーンというのは唐突に感じられてしまい苦手という人も少なくありません。ところが、『軍師』では八宝斎が土井先生を天鬼だと刷り込むために聞かせた“洗脳ソング”として挿入されています。終盤で天鬼の記憶が戻りかけるシーンでも八方斎が口ずさんでおり、挿入歌を上手に物語に取り込んでいるのがわかります。
子どものしたことが無駄にならない展開
『軍師』は六年生や先生達等、乱太郎達から見て“大人”にあたる人達にスポットがたくさん当たります。さらに、天才軍師の出現によって周辺の国が睨み合うなか土井先生を奪還するという、学園の外で物語が動いている作品でもあります。まだ子どもである忍たま達は話に関わりにくい展開に見えますが、『軍師』はそこをカバーしている。すげぇ。
大人が囮だと突き止めている砦に行き、まんまと捕まってしまった一年は組。しかし、移送先が八宝斎のいる砦だったため、天鬼の居所を探していた大人達に大きなヒントを与えた……という流れ。
子どもの力だけではどうにもならないという現実を描写しつつも、それがトゥルーエンドへ導く大きな活躍でもあった……という落とし所が、子どもが主人公の作品で大人がメインのシリアスをやるという難しい作劇に活きていたと思います。
オタクとしての所感
ふらっと観に行った『軍師』ですが、思った以上に映画としてもよく出来ていることに気づき、複数回見に行く程度にはハマりました。
元々忍たまのファンである人に加え、日本史に詳しい方々による考察が流れてくるようになり、気になって確かめにもう一度鑑賞する……なんてことも。
大人の、それもオタクの鑑賞に耐えうるクオリティなの凄くない?
面白い子ども向け作品って大人が見ても面白いし、子ども向けだからといって舐めた感じがしないものなんですね……。
忍たまというご長寿アニメだからこそ、“誰が見ても面白いと思ってもらえるように”あらゆる細やかな配慮と作り込みがなされていたように感じます。(公式の意図が違ったらゴメン)
また、年が明けた頃からTwitterでも流行り始めたのを覚えています。(体感だがゲ謎や児童向けコンテンツにいた人が次々と移動してきた気がする)
ただ、Twitterを漁っていると、大人のファン層が想像してるのとちょっと違ったというか……もっと歴史とか好きなオタクが多いのかなって思ってました。もしくはニチアサやホビアニにいる層。
実際の印象としては、いわゆる女性向けコンテンツや少年漫画で女性向け同人活動してる層に近いものを感じました。
しかもめちゃくちゃ人口いませんか?
フォロワー達も「昔オタクとして通ってきたことある」って人多くて。そんなオタク基礎教養みたいになってんの!? 天てれを卒業したあたりから見なくなってたからびっくりなんだけど。
公式も大友人気をわかってるのか、大人に向けた展開はがっつりオタ向けですよね。グッズはバンバン出るし、ミュージカル(2.5舞台)もある。
いや〜知らなかった。
とくに夢とBLがそれぞれかなりの規模で盛り上がってるなんて想像もしてなかったんですけど、自分も女児向けアニメに百合を見出す異常成人女性だからドン引きする資格ないな……と思い直しました。
まとめ
アニメ映画好きとしても『軍師』はおすすめできるな〜と思いました。
劇場版ならではの緊迫感とシリアスが楽しめるし、殺伐としたものを感じさせつつ人を選ばない描写に抑えてあるのも、気軽にオススメ出来るポイントだと思います。
劇場版の前作『全員出動!』や劇場版1作目とTVシリーズも少し見ましたが、それでも『軍師』がとくに刺さりました。アクションに力を入れている点と、戦災のシーンを暗喩を上手く用いて描いている点がたいへん好みです。
普段はキッズアニメ見ないんだよな
でも忍たまは昔見てたし懐かしいな〜
……という方にぜひ見てほしい映画です。配信もあるので、冬休みにおうちでのんびり見るのもおすすめ。


