香港の人気俳優、テレンス・ラウ。(人気すぎて『香港の国民的夫』と呼ばれているらしい)
昨年、日本でも流行った『トワイライト・ウォリアーズ』の信一を演じていた方です。
気がついたら出演作を6本も見ていました。とにかくジャンルが広い!
普段アクションとアニメばかり観ているので新鮮でした。
この記事では、映画の内容にも触れつつ、どんな役者なのかについて考えながら観た感想をまとめていきます。
「何から見ればいいかわからない!」って人の参考になれば嬉しいです。
テレンス・ラウを知るきっかけ
『トワイライト・ウォリアーズ』にハマり、原作も読み、信一に落ちました。ちなみに、「信一」と書いて「ソンヤッ」と読みます。
信一を演じているテレンス・ラウにも興味を持ったのがきっかけです。
香港映画にハマりたてで、次に何を見ればいいかわからなかったのもあり、とりあえず顔を覚えている役者さんの繋がりで見てみるか……って感じで、他の出演作にも手を出すようになりました。
普段アクションやアニメばかり見ているので、いつもは見ないジャンルも多くて新鮮でした。
間違いなく、自分の映画の世界を広げてくれた俳優だと思います。
観た作品
トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦
初めて見た香港映画。
90年代前半まで香港に実在した九龍城砦を舞台に、黒社会の抗争を描く物語。
実際に住んでいた人がスタッフとして参加しており、城砦内部に住む一般人の暮らしも描かれているのがミソ。
インド映画やハイローが好きな人がこぞって勧めていたので見に行ったら超面白かった!
原作も買う程にはハマってしまい、最近は『龍頭』と『信一伝』を買って読み進めています。
上でも書いた通り、この作品でテレンス・ラウを知りました。
九龍城砦を仕切っている龍捲風の後継者・信一を演じています。
この作品、かっこよくて熱いキャラしかいないのですが、なかでも私は信一がとくに好きです。
(この映画の主要キャラ全員そうだが)とにかくビジュアルが強い。
お洒落な服装、バタフライナイフを用いた華麗な戦闘スタイル、城砦の狭い通路をバイクで駆け抜ける豪快さ。
そのどれもが超カッコイイ!
黒社会の人間であるということを除けば、気の良い兄ちゃんって印象のキャラクターです。
しかも、数字に強くて金勘定ができる。
映画では帳簿を付けているシーンがチラッとある程度ですが、原作ではがっつりお金の話をしています。
城砦の経理を任されているようで、計算中、ゾーンに入るような描写も。原作だとスーツ姿でこちらもま〜じでカッコいい。
で、この作品、アクション映画なだけあってアクション俳優やスタント出身の方も多くキャスティングされています。
主要キャラの一人である信一を演じたテレンス・ラウもアクション俳優なのかと思ったらそうでもないらしい。
本格的なアクション作品はこれが初めて???マジ??
じゃあ普段はどんな作品に出ているんだ……?
ここから俳優としても興味が湧き、公開予定作に“テレンス・ラウ”の文字があったらとりあえず見てみるか〜とチェックするようになりました。
スタントマン 武替道
信一役(テレンス・ラウ)と王九役(フィリップ・ン)の人が出演していると聞いて鑑賞。いわゆる“映画を撮る映画”。
テレンス・ラウとフィリップ・ンの顔を覚えた状態で臨みましたが、信一とも王九とも全く雰囲気が異なっていて驚きました。
とくにフィリップ・ンは初めて見たのが(ビジュアルとキャラクターにクセがありすぎる)王九だったので、この作品の役柄はとても新鮮でした。旧いやり方に疑問を持ち、スタントマンを取り巻く環境を変えようとしたまともな上司・先輩キャラ。王九とは全然違いますね。
また、香港映画を見始めたタイミングでこの作品に出会えたのは幸運だと思います。
というのも、私は香港映画の黄金期を知らない。
これまで触れてこなかった、というのもあるし、世代的にも昔の香港を知らない。
懐かしんでいる人達の空気感がわからない。
だから、香港人が香港や香港映画の在り方について考えている作品を打ち出してくれることが、とてもありがたい。
歴史的に何が起きたかは勉強すればわかるけど、当時を生きた人々の気持ちや今、現地で生きる人々の様子を知るには不十分だから。当事者による発信はとても意義があると思う。※『武替道』はフィクションだけど。
テレンス・ラウが演じるスタントマン志望の若者は、香港と香港映画を取り巻く問題を反映したキャラクターなのだと感じました。黄金時代の香港映画に魅せられ、スタントマンの夢を諦めきれない若者という主人公らしいキャラクターではありますが、この作品が持つメッセージや背負っているテーマを考えると、一筋縄ではいかない立ち位置にいるなぁと思います。
鯨が消えた入り江
時間と空間を越える不思議なポストで文通をしていた青年達の“すこしふしぎ”なお話。
ジャンルはなんだろ……ヒューマンドラマなのかな。時間モノ(過去・未来改変)の要素もあります。
青年2人の絆を描くお話のためか、若干BL的な演出も。(これに関しては人によって受け取り方が違うと思います)
また、上の二作とは雰囲気が違い、しっとりした作風です。
映画だとあまり見ない系統ですが、小説やアニメで馴染みのある味がしました。うまく言えないけど、私は好きですこういうの。
テレンス・ラウは主演の一人として出演しています。(台湾映画に香港人キャストとして参加)
信一と同じ顔なのに儚さがすごい。ふっと消えてしまいそう。
人間ってこんなにガラッと雰囲気を変えられるんだ、役者ってすごいな〜と感じました。
『トワイライト・ウォリアーズ』のテレンス・ラウしか知らない人にこそ見てほしい。
信一はバイクを乗り回していたけど、天宇は「バイクなんて乗ったことない」とでも言いたげ。
同じ人間が演じているのに別人すぎてすごい。
この作品は時間モノの要素があるため、天宇は過去・未来改変による世界線の移動をしているような描写があります。それ故に記憶が混濁しているかのようなシーンもあり、見る人によって解釈が分かれます。
脚本を読み込んで理解するだけでもかなり大変なキャラクターなのでは、と感じました。
ちなみに、もう1人の主演であるフェンディ・ファンとは「顔が似ている」と話題なんだとか。(パンフ読んだ感じ、キャスティングもその辺が加味されてるっぽい)
幻愛 夢の向こうに
統合失調症で恋愛の妄想に苦しむ若者と、彼の相談員として症例の研究に励む大学院生のラブストーリー。
患者と相談員が恋愛関係になることは倫理的にアウト。でも、互いの存在が救いになっている場合、それでも引き離すのは本当に本人たちのためになるのか……?と考えさせられる終わり方でした。
精神疾患というセンシティブなテーマを扱っており、決して明るい話ではないのですが、暗くもない……という良い意味で淡々とした美しさがあります。普段見ないジャンルなので新鮮でした。
統合失調症の若者を演じたテレンス・ラウ。彼の幻覚に登場する女と、現実で恋に落ちる相談員役を演じ分けたセシリア・チョイ。どちらもとても難しい役だと思います。
この作品は香港でかなりヒットしたそうですが、それは脚本や演出の巧みさに加え、主演2人の力量あってこそでしょう。
テレンス・ラウは役作りの際に台本を読み込んでキャラの背景まで作りこむタイプの俳優だとネットの書き込みで目にしたんですけど、そりゃこんな難しい役ばかりやってるならそうだろうよ。
長安のライチ
ライチを運ぶ話&政治批判も入ってるのでは?というネタバレっぽいものを見かけましたが、それ以外は知らない状態で見た、中国映画。
生ライチを嶺南から長安まで(数千km)運べという無理難題を押し付けられた下級役人の奮闘を描く物語。
担当者と取引先で合意が取れた瞬間、上司が出張ってきて計画から逸れて取引先からの信用もなくす……そんな社会人発狂ポイントもあります。
上の役人は無理難題を下級役人に押し付ける。
下級役人が真面目に取り組むことで皺寄せはさらに下にいる民にいく。えげつない搾取構造。
唐の時代を舞台にした時代劇なのに、こんなご時世だからか日本の現状と重ねてしまう。
でも、それも時代劇を見る楽しみだなぁと思います。
テレンス・ラウは主人公が嶺南(ライチの産地)で出会う奴隷・林邑奴を演じています。
あまり言葉を発さず、虐げられていてもぼんやりとしている様子が逆に奴隷という身分を感じさせる。おもしろいアプローチだなと思いました。主人公が人間として接し続けたことで、自分の意思で行動を選べるようになっていきます。
キャラ造形でいうと儚い寄りのテレラウな気がします。でも、上記のような変化が描かれたことで、信一役で見せたようなパワフルさも感じられるシーンがありました。
配役までは調べていなかったので、序盤はテレンス・ラウを探しながら見ていたのですが、小汚い奴隷の格好をしていても、セリフが少なくても、テレンス・ラウってわかるもんだな……と気づきを得ました。なんか目ヂカラがある。
鑑賞後に気づいたのですが、香港の俳優だとアンディ・ラウも重要な役で出ています。
たべっ子どうぶつ THE MOVIE(広東語吹替版)
愉快動物餅。
吹替が決まったとき、らいおんくんと信一が並べられているファンアートがネットに溢れかえってて笑いました。
原語(日本語)で鑑賞済み。
外国語吹替になるだけで一気に海外アニメ感が増す。
本当にらいおんくんからテレンス・ラウの声がして面白かったです。
元々難しい役柄が多い俳優さんなのかな〜と感じ始めたタイミングでこの吹替版を見たので、キッズアニメの吹替までできるんか……と演技の振れ幅に驚きました。
広東語に詳しくないので、吹替声優としてどうなのかはわからないのですが、いわゆる芸能人吹き替えに対する香港の評価はちょっと気になります。
個人的にはらいおんくんに合っていたと思いますが。
テレンス・ラウという俳優に対する所感
どこか影のある儚めな役が多い
あくまでも体感ですが、なんか全体的に儚さを感じる役が多い気がします。
日本で有名な信一やらいおんくん(吹替)ってかなり珍しいタイプの役なのでは!?
そういう演技が得意だからそういう役に偏るのか、しっかり役作りして向き合うスタイルだからこそ、難しい役を担当することが多いのか……どっちなんだろう。役者としてのパブリックイメージにも関わってくると思います。
難しい役を自分のものにしてしまう理解力
出演作を見れば見るほど、「なんだこの難しい役は!?」って驚く。
考えさせられるテーマや考察の余地がある作品ほど、役者の表現力って大事だろうし、しっかり向き合って仕上げてくるのって実力の証明ですよね。
声帯が強い
『トワイライト・ウォリアーズ』の「ポン!」や「四仔!」が有名ですが、とにかく声がよく通るし声量もあるんですよね。
元は舞台出身らしい。香港だと舞台、映像と複数の媒体で活躍する俳優は珍しいようです。このあたりの経歴も関係しているのでしょうか。
また、少し調べたところ、このような記事を見つけました。
経歴や撮影・キャスティングの裏話をされています。
何を見るか迷ってる人へ
アクションが好きor香港映画が好き→『トワイライト・ウォリアーズ』『スタントマン 武替道』
演技力や表現力を堪能したい→『幻愛 夢の向こうに』『鯨が消えた入江』
全人類向けエンタメが見たい→『長安のライチ』
個人的にはこんな感じでしょうか。
どれも良作ですが、ジャンルがバラバラなので、人によって好みは分かれる気がします。
日本でいちばん有名な出演作は『トワイライト・ウォリアーズ』だろうから、迷ったらこれでいいと思います。ただし暴力描写・ゴア表現が苦手ならおすすめしません。
最後に
今回は「最初に見た香港映画で好きなキャラを演じた人だから」という理由でテレンス・ラウの出演作を何作か見ました。
普段はジャンルや監督で見る作品を決めることが多いのですが、(珍しく)俳優繋がりで鑑賞することで、映画の世界がもっと広がった気がします。
香港映画を見るようになってちょうど1年経ちましたが、まだまだ沼の入り口にいる気持ちです。
映画をきっかけに広東語や香港の歴史、俳優関連のインタビュー記事などを調べるようになり、好奇心を刺激されまくり。インド映画のときとまったく同じ道を辿っているような……。
私は『トワイライト・ウォリアーズ』から入ったため、往年の香港映画の名作には詳しくありません。しかし、このタイミングで出会ったことで、良かったこともあります。
この記事で語ったテレンス・ラウを含む、“今”ホットな香港人俳優を知ることができたこと。
リアルタイムでその活躍を追えること、過去の出演作にもアクセスしやすいのはメリットだな、と考えています。
今後の活躍も楽しみな俳優に出会えて嬉しい。これからも気ままに追いかけていけたらな、と思います。

