先月まほやくを始め、ストーリーを中心に履修を進めています。
1.5部まで走ったところで、期間限定開放中のイベントストーリーに手を付けました。今回の記事はイベントストーリーの感想をまとめたものになります。
主にルチル、シャイロック、シノ(幼馴染主従)、元相棒が特に気になるため、先輩賢者さんたちのおすすめを調べつつ、気になるものを読めるだけ読んできました。感想は読んだ順に並んでいます。

感想
慕情燃える海街のラプソディ
シャイロックの故郷で起きた異変と、この街の景色を愛した魔法使いのお話。
バーが魔法使い達の憩いの場になってることや、街を占拠した地元の魔法使いがそれなりの数いそうなことを考えると、魔法使いってけっこういるんだな……と感じました。
1万人に1人の確率とはいえ、魔法使いは長命だからね。今、生きてる人間と魔法使いの比率がそのまま出生率と同じになるわけないもんな。
魔法科学兵器、やっぱりいろんな意味で非人道的でエグいな……と思いました。動力になるマナ石は誰かが生きた証でもあって、残された人々にとっては大切なその人の一部なのにね。
暴走する兵器を見て、マナ石の主に思いを馳せる各々の考察が三者三様でおもしろいな~と思いました。ムルがいちばん身も蓋もない言い方で苦笑いしたけど、シャイロックはそういう情緒を大切にするタイプに見えます。価値観違いすぎるのによく仲良くなれたな。
バナーにもなってるシャイロック、灯篭流しみたいな雰囲気あるな〜と感じたんだけど、マナ石を本人が好んでいたカクテルと共に海に返すという切なく美しい場面を切り取ったものだったんですね。
天空の宴に春を招いて
精霊にさらわれた少女探しとルチルの思い出話。
蜂蜜酒が飲みたくなるスト。
寂しさから子どもの魔法使いを攫う精霊と、攫われた子を迎えに来た母の交流があたたかい。
チレッタが話に聞いてた通りの強くて優しいマミーって感じで良かった。
彼女、回想でがっつり喋るんですね。生前交流があった魔法使い達の話に名前が挙がりやすいけど直接登場はしないキャラだと思ってました。(部活辞めそうな桐島みたいな描かれ方)
ネロが「この先なんらかの理由でルチル達が来れなくなったらどうするんだ」と心配していたの、最もだなぁと思いました。
でも、ルチル達がチレッタの「精霊達が寂しくないよう定期的に遊びに来る」という想いを継いだわけだし、今回のように一緒に宴を楽しんだ魔法使い達が同じように継いでいけばいいんじゃないかな、と思う。
それこそ春の訪れを祝うお祭りとして、南の国の魔法使い達の新たな伝統のようになっていったら素敵だな……。
誇り高き狩人のバラッド
人を喰らう怪物を調査・退治しに行く回。
人間と魔法使いが互いに少しでも歩み寄ろうと試みることで何かが変わるかもしれない、そんな祈りが込められた物語でした。
ネロがボリスに「目的は同じなんだ、魔法使いを利用する心持ちで構わない」と伝えたの、歩み寄るためのハードルを下げるという意味ですごく優しいな……と思いました。
シノとヒースの関係について掘り下げるお話でもあったな、と思います。
主従としてはシノが、友達としてはヒースが正解だと思うのですが、両方正解だからこそ、うまい落とし所を探っていくべきなんですね。幼馴染故にコミュニケーションが雑になりがち+東の魔法使いの性質からして、2人とも他人に自分のことを伝えるのが下手なのかな……。
シノがヒースの知らないところで危険な依頼を請け負いながら、ヒースが自分にとってどんなに素晴らしい主君なのか吹聴してたの面白すぎる。(ヒースからしたら全然面白くないのだが……シノが隠し事してたことも、父がシノに危険な仕事をさせていたこともショックだっただろうし……)
前の厄災で仲間達の死を目の当たりにし、自分を庇ったファウストが死にかけたことを引きずっているであろうヒースが、シノに危ないことをさせたくないという気持ちはめっちゃわかる。
でも、「もっと強くなってヒースの役に立ちたい」というシノの気持ちもわかる。お互いが大好きで大切だからこそすれ違う……なんて良い味がするんだ。
「おまえは父上と俺、どちらの家臣なんだ」
この台詞痺れましたね。
シノは友達でもあるから危ないことはしてほしくないって日頃から悶々としてるヒースが、こういう時はシノを自分の従者(もの)だとわからせようとしてる感じがこう……一種の独占欲みたいなものだよな、とゾクゾクした。
まほやく、お出かけや依頼に向かう時にその場に合ったお洋服を新調して着替えて行くの、とっても素敵。女児向け着せ替えモノが大好きなため、大事な戦いの前にお着替えするのがお約束になってるの、テンションがアガる〜〜〜!
クロエが登場しないお話でもクロエ作の新作衣装は出てくるんですね。
哀愁のひまわりのエチュード
400年前に処刑されたファウスト達の元同志の呪いを解く話。
元相棒が離れた理由をなんとなく察しました。ネロ、ず〜っと引きずってるのか。
あと、東の国最年長がネロなの、ファウストじゃないんだってビックリしたけど、面倒見の良い兄貴ムーブが年の功から来てるならわかる気がします。
ネロの「30回死にかけたら、一緒にいられないとわかる」という経験則からのアドバイスに「100回死にかけてもずっと一緒にいる」と返し、自らの主君に「血塗れの俺にも見慣れてもらう」と言い放つシノ、覚悟が決まりすぎてて怖い。
幼馴染主従の周りにいる大人達が、かつて仲間の手を離した(放された)ことを引きずっているのがさぁこう……彼らの行く末を暗示してるようで怖いんだけど、「俺とヒースは絶対に離れない」と言い切るシノの様子を見てると「この2人なら大丈夫なのでは?」と感じてしまうけど、昔のネロ達もきっとそうだったんですよね。
未完のワインに思いを馳せて
シャイロックの友人・バッカスがワイン造りに注ぐ情熱が伝わってくるお話。
シャイロック回はやっぱりお酒や酒場の客にまつわる話が多いのかな。 そこに厄災による異変の調査が絡んでくるのもあって、大人向けのライト文芸っぽい雰囲気を感じます。ジャンルでいうと日常の謎やローファンタジーに近い。
バッカスが魔法使い故にその長い生涯をワイン造りに費やしているの、すごい情熱だなぁと思います。しかも魔法はワインの長期保存にしか使わないという徹底ぶり。
彼を見ていて、魔法使いが本当に恵まれてるのは不思議の力そのものではなく、長命かつ何かに惚れ込んで極めようとする性質により、特定の分野で成果をあげやすい点なのでは?と思いました。
そのぶん知識や技術が属人化しやすいという欠点もあるけど、巡り巡って人間の生活も豊かにしているのはすごい。
ブラッドリーが豪快に飲むのも、ルチルが上品な佇まいのまま陽気に酔っ払うタイプの大酒飲みなのもめちゃくちゃ良いですね。
あと、ワインの年代でみんなの年齢がだいたい割れてるのじわじわくる。
オズ様って2000年生きてんの!?


この衣装、めっちゃ可愛くない???
勇敢な開拓者のバラッド
開拓者が見つけた古代遺跡の調査に行くお話。
ここに来てようやく北の魔法使いが登場するイベストを読みました。
ブルックと接する魔法使い達の様子を見て、人間との交流がない魔法使いにとって、魔法使いを恐れない人間の方が扱いに困るんだろうな…というのを感じた。たぶん東の魔法使いもブルックみたいなタイプは苦手そう。
明らかにヤバそうな古代生物と魔法使いを手こずりながらも封印した……というけっこう大きそうな事件を3人揃ってほとんど忘れていたの、長く生きてると時間の感覚が鈍るうえ記憶も薄れていく、というのがよくわかりますね。
なんかしれっとホワイトの死因というか経緯を踏んでしまってビビった。
スノウが殺したの!?!?!?なんで!?!?!?
(これについては親愛ストーリーで読めるとフォロワーさんから聞いてたのでマジでびっくりした)
殺したのに魂を繋ぎ止めてずっと一緒にいるんですか? なんかの弾みで取り返しつかないことをしてしまったはずなのに、今日までそれをねじ曲げて平然としてるのが怖い。
サイドで展開されていたレノさんとステーシーの緩やかな師弟関係にほっこり。「レノックスさんみたいになれますか?」ときいたステーシーに対して「俺みたいにならなくていい、きみはきみにしかなれない魔女になれる」と答えたのすごく良いなって思いました。
夕陽笑む温室のラプソディ
ヒースクリフがシノに呪いをかけてしまったかもしれない話。珍しく(?)厄災絡みではなさそうな回でした。


あの温室と箱庭、幼いヒースが無意識に思念を乗り移らせてしまったんですね。ただ、今回の異変自体は厄災の影響ではないんじゃないかな……というのが個人的な見解です。
あのイマジナリーフレンド自体が幼い魔法使いの微弱な魔力で無意識に作り出してしまった呪いみたいなものじゃないのか、と思うんだけどどうなんだろ。今になってオレンジの樹のことを気に病んで一時的に魔法の調子が悪くなったのが呪い返しみたいなものだったのでは。
ヒース、心のどこかでシノを束縛してるんじゃないかって常にうっすら思い詰めてない……? シノとしては多分そういうところも上等だくらいに思ってそうだけど……。
今回の件も何が起きたのか察してヒースを待っていたあたり、シノは全部わかってるというか、状況を受け入れて最善を尽くすだけの心構えができているのがこう……悶々としがちなヒースとの対比になってる気がします。
あと、幼いヒースにとって大切な場所だった温室を「荷物置き場にしたい」と上がり込んできた元師匠、確信犯ですよね!? 弟子が大切にしてるものを我が物顔で使うことで、力関係をわからせて言うことを聞かせるやつなのでは……?
ヒースが自己肯定感低そうなの、元々の気質もあるだろうけどこの師匠が酷かったからでは……と思わずにはいられない。たぶんまだまだ掘ればクソみたいなエピソードがいっぱい出てきそう。


こないだ野良のフレンドカードで呼び出したファウストが着ていた、カンカン帽にブルーグリーンのスーツ、このお話に登場する衣装だったんですね。色違いのカインとヒースもよく似合ってます。かわいい~!
こうやって何かあると可愛い服にお着替えするけど、それで魔法が強くなるとかの効果はないんですよね……?(可愛くお着替えすると必殺技が強くなる作品を普段嗜んでるオタク並みの感想)
青春と花嵐のノスタルジー
公式学パロwwwwwwww
まさに混沌。なんだこれ……wwwww とゲラゲラ笑って読んでいたら、最後の賢者でやられました。元の世界を懐かしむ気持ちを持ちながらも、無意識のうちに帰りたくないと思っていた。突然やってきた異世界で、ずっといたいと思える居場所を見つけていた。賢者として慌ただしい毎日を送る賢者がそれに気づくお話でもあったんですね。
進学校・不良校・芸能校・教師の組分け、この人はここしか考えられないというものから、意外性を感じるものまであって面白かったです。
最近、ルチルのことをふわふわ癒し系のギャルじゃないか?と思い始めて頭を抱えていたので、学パロルチルのギャルっぷりをみて「やっぱりそうじゃん!」と自分の勘(?)に確信が持てました。ムーンライトディスコ歌ってほしい。
あとこの世界線のミスラ、絶対何回か留年してるだろ。五留で一流を地で行ってほしいですね。
不良校の学生が北の魔法使いに偏ってて「ですよね」と思いました。
ヒースとシノの公式アイドルパロが存在するの、あまりにも私に優しすぎませんか???(ニコイチアイドル百合大好きオタク) しょっちゅう解散芸してるタイプなのがじわじわきた。
そのうち過去最大の解散騒動をするし、和解し再結成した日を最後に解散芸はしなくなるんですよね。で、それ以来隙あらばイチャイチャし始めるんだ。さりげなくアクセサリーをお揃いにしたり、みんなで写ってる写真でしれっと恋人繋ぎしてたり互いの視線が向いてたりするよ絶対。私は詳しいんだ。
この学校カリキュラムも校風もめちゃくちゃじゃねーか……とハラハラしてましたが、不良校にいながら合併を機に勉学に力を入れようとするネロの存在で一気に話が動いたのが印象的でした。
アルテレーゴの掟
公式マフィアパロ。
ここまで読んできたなかでは『未完のワイン』や『温室のラプソディ』と並んで好きだな〜と思ったお話。
シャイロックはチャイナ服が似合いそうだよなぁと思っていたら、まさに想像通りの治安悪そうなチャイナ服姿をお出しされ、手ェ叩いて笑いました。


ヒースの一派が洋風マフィアで、スノウの一派が和風(極道系)なのも混沌としてて楽しいです。そして色分けもあって誰がどこに属しているのかわかりやすい。
九龍城のような街を舞台にマフィア同士の対立や協力を描きつつ、生命倫理に挑むSFの要素もあってめちゃくちゃ面白かったです。
キーアイテムとなるリキュールとその関連アイテムの色鮮やかな描写が印象的でした。終盤はかなりエグい展開でしたが、そうした小物を活かした情景描写が、この美しくてあたたかくておぞましいお話を彩ってくれていたんですね。
終盤の愛憎に痺れました。これ、明確に本編の反転をやってますよね!?ね!?
大ダメージを負って微妙に人格に差異が生まれた今回のシャイロックと、厄災に魅入ってしまい魂が砕けた本編のムル、同じだね……。相方が世話をしていた辺りも同じですね。
この世界線で2人に増えたシャイロックとムルの会話も見てみたいです。
あと、印象的だったのが“侮られないよう堂々と振る舞うヒースクリフ”と、“最初から真相を喋っていたオーエン”ですね。
ヒース、なんというか演技派だよね。普段は控えめな雰囲気だけど、ここぞ!というときはちゃんと人の上に立つ人間に相応しい振る舞いができる人。
オーエンの不死については今回限りの設定であって、本編ではまた違う展開が用意されてるのかな……と思いました。
最初から核心に迫ることを堂々と喋っていたオーエンや、死亡時のシャイロックの状況等、最初から読み返したくなる仕掛けが施されてるのも私好みです。
悪戯好きな仮面のエチュード
クロエが魔法舎に来たばかりの頃のお話。
地方から上京してきたばかりの大学生みたいなクロエ、初々しくて可愛かったです。若そうだなとは思ってたけど、ルチルと同い年なんだね。
レノさんの羊を連れ出してクロエに見せてるルチルにめちゃくちゃ小学校の先生っぽさを感じた。同年代相手にこれやられたら不思議ちゃんにしか見えないよな。(ほんとに不思議ちゃんっぽい面もあるけど)
西の魔法使い、クロエだけがたぶん見た目相応の年齢で、他の3人は常人の数倍~数十倍は生きてるだろうからね……国ごとに訓練となるとクロエへの個別指導になるよね。
いい歳した(どころではない)大人たちがちょっといけない感じのおままごとしてるの、西の魔法使い特有のおふざけって感じで面白い。
1000年以上生きてるであろうシャイロックが、政治的な思惑が透けて見える行動を「美しくない」と嫌うの、あれだけ普段大人の雰囲気を醸し出しておきながらそういうところはピュアなんだ……逆にすごいな……と思った。
孤高な盗賊のエチュード
北の魔法使いの初任務の話。
一匹狼タイプが多い&強すぎる&攻撃的すぎるが故に、被害を最小限に抑えてチームで動いて任務を遂行するという基本的な課題が見つかったのがなるほどなぁ……と思いました。
互いに向ける矢印が基本的に「くたばれ」な北の魔法使い達、傍から見てる分には面白いけど数百年に渡る対立と共存の果てに辿り着いたのがこれだからなぁ。オズとフィガロが丸くなったという話も興味深いですね。
あと、西の魔法使い相手だと調子が狂うというのも面白い性質だな、と思います。好奇心旺盛で物怖じしない気質故に脅しが効かないため、恐怖を与えることを武器にする北の魔法使いからするとやりにくいというのがよくわかる。
ミスラとオーエン、並の人間や魔法使いが関わっちゃいけないのは事実ですが、上手い扱い方を心得ていればむしろかなり単純なのでは……と思います。
変化を楽しめると良いといった話、普通の人間からしても大事なスタンスだと思います。数百年、数千年と生きる魔法使いからすると、これをずっと実践していくことになるのがキツいとは思いますが……。長い時のなかで適応障害みたいになって苦しみ弱っていく魔法使い、いっぱいいたんだろうなぁ。
絶対に仲間を売らないブラッドリーと部下を置いてトンズラしようとした今回のお尋ね者、明らかに“格”の違いがわかって興奮した。
むしろこれだけ人を束ねる才能に優れたブラッドリーがなぜ捕まったのかが知りたいですね。これで仲間に売られたからとか、仲間を庇ったからとかだったらエグい。
神聖なる宝剣のエチュード
聖堂に保管されていた宝剣を城に移転する件で一悶着あったお話。
“魔法使いは人に尽くして当然”という認識が浸透している中央の国において魔法使いに生まれることの苦労が窺えました。「あなたのことわかってるからね」と歩み寄る素振りを見せながら、全くわかっていないうえ悪気のない輩がいちばん厄介なんだよ。
アーサーとカイン、歳が近いだけじゃなく自身が魔法使いとして生まれてしまったせいで母親が思い詰めてしまった者同士でもあるのか。主従関係でありながら友人であり、互いの理解者でもあるというのが伝わってきました。
オズがアーサーに向ける親心が感じられるお話でもありました。「大きくなったらお前を石にして食ってやる」を照れ隠しで言うの、ド直球の魔女集会概念で爆笑した。思春期の子どもにどう接していいかわかんないお父さんって感じ。
賢者(我々)は今のオズしか知らないけど、過去を知る者達が口を揃えて「オズは危険」と言うあたり、アーサーを拾った時は本当に「石にして利用してやろう」って思ってたんじゃないかな。
アーサーがオズに育てられたように、アーサーもまたその善性でオズの良心を育てていったのだと思います。
雨宿りのカエルのエチュード
南の魔法使い達の初任務・雨が降り続く村の調査をするお話。
カエルに心を奪われた魔法使いの情熱と友愛がこもった庭園をみんなで供養する……雨が止まない庭園の美しい情景描写もあって、切ないお話でした。
ミスラとチレッタの約束、それを知った兄弟の衝突、こんな早いんですね。自分達の自由を訴えつつ、己の存在がミスラにとっての不幸にならないでほしいという祈りストレートにぶつけるルチルの豪胆さが印象的でした。
それから、ミチルを産んだことでチレッタが亡くなったことを気にしているのはミチル自身なのがつらい。それに対するミスラが「自分は選ばれなかっただけ」と返したのもこう……チレッタに対して思うところはあるけどミチルを責める気はないという大人の複雑な本音と気遣いが感じられました。
あとフィガロの悪いところがめちゃくちゃわかりやすかったですね。レノさんとギスったのを見て、人間の数倍生きてる者同士であっても年の差ってエグいんだな……と思ってたら、スノウに対しても煽りまくってて年の功とか上下関係とか関係なくこれなのか……と認識を改めました。
欲望と祝祭のプレリュード
厄災の異変を鎮めるため、各国の神殿を甦らせて儀式をするために奮闘するお話・西の国編。
愛憎がすごく愛憎だった。怖。会うとギスギスするけど、肝心なときに自分の店を差し出せるシャイロックと、それを見て「店が無くなるのは嫌だ」と自分の欲を放り出せるムルを見て、確かにこの2人の間には友情があるんだなぁとしみじみ思いました。
サロンの空気は妖精の仕業とされていたけれど、欲望に取りつかれた貴族と、自分の幸福を忘れた使用人達の様子が生々しかったのが印象的でした。とくに家なし魔女の精神状態が完全に虐待やブラック企業勤務で洗脳されている人のそれで怖かったです。
貧民街の生まれで持たざる者の苦しみがわかるクロエと、見目麗しい貴公子として生まれたが故の心労があるヒースを続けて描いたのも対比を意図してるんだろうなと感じました。
あと、魔法を使って一瞬でお着替えしてて「やっぱりできるんだ」と感動した。オシャレ魔女じゃん。これでどんどん増えてく服の保管を魔法でしてたら嬉しい。異空間にクローゼット作るとか、ミニチュアサイズに縮めるとか、カード化するとか(女児の発想)。
正義と祝祭のプレリュード
各国の神殿を甦らせて儀式をする祝祭編・中央の国編。
オズが古代都市を滅ぼした理由が「魔法使いが人間に搾取されている様に怒りをおぼえたから」なの、今のオズから想像して納得はいくけど今はたぶんやらないだろうな……という絶妙なラインですよね。
アーサーを拾って変わったと思ってたけど、元々中央に見られる指導者向きで人助けを好む気質自体は持っていたんじゃなかろうか。やり方が北の魔法使いらしいってだけで。
各国の特色と魔法使いの気質についてわかるシリーズなんですね、これ。イベストとはいえ2部前に読んでと言われる理由がようやくわかった気がします。中央は命知らずで目的地を大事にする気質、というのが温厚な南の魔法使いとの比較でわかるようになってますね。
兄弟から見たミスラ、変なお守りをくれるおじさんって感じなんだろうなぁ。危険が近づくと「無理無理無理」「逃げて逃げて」と声を上げるの、災害アラートみたいだな……とじわじわきた。
奇跡と祝祭のプレリュード
祝祭シリーズ・東の国編。魔法使いが迷い込んだら生きて帰れないとされる閉鎖的な村で神殿を探すお話。
これまで読んできたイベストのなかでもかなり血生臭いお話でした。それが繊細な感覚を持つ東の魔法使いの性質の説明とも結びついてて、必要なグロさだったな……と思います。
他の祝祭編も人間の身勝手さといった精神的なグロは描かれてたけど、ホラー映画的なグロさは今回特有だなって感じです。
陰鬱な村にいて気が滅入ってる3人と違って、シノだけ「慣れてる」という理由で平然としていたのがつらい。魔物退治や厄災絡みの異変調査においては、精神的にデバフかけてくるものへの免疫があるのは強みでもあるけど……。
いざと言う時に暴れまくる北の魔法使い、頼りになるけど脳筋だな……と思います。強いからこそ上手に手加減してもらうか、こういうピンチのときだけパワーでゴリ押してもらうのが最善なんでしょうか。
あと、中央を先に読んでたおかげで、オズとミスラの魔力差がなんとなく掴めた気がします。ミスラはどこでもドアを作らないと瞬間移動はできないけどオズはドア無しでやってのけたりとか。レモラとの戦いもオズなら全ての頭を同時に吹っ飛ばすくらいのことできたんだろうなぁ。
親愛と祝祭のプレリュード
祝祭シリーズ・南の国編。
陰惨な前回に比べると爽やかで温かいお話でした。
もこもこの生き物・ムゥムゥがすっごくかわいい。これは情が湧いちゃうでしょ……と思ったら案の定で。でも、つらい別れを受け入れたからこそ、ミチルが自分だけの力で生き物を保護して自然に返してあげたという成功体験を得られたんですよね。フィガロがそれとなく自分でやるよう誘導し見守っていたのも印象的でした。フィガロ、難しい年頃の子どものお守りは向いてなさそうな印象があるのですが、今回は上手くやっていたなと思います。
はしゃぐルチル、ギャルだなぁ……と思いました。あと、魔法を使わずやってみようとするものの、手応えがなかったら「魔法使った方が早いや」と速攻で切替えられるところもじわじわくる。やさしくておっとりしてるけどカラッとしている、そんな人だなぁと思います。
目印にハートとパイプの雲を作ってシャイロックを煽るフィガロ、何??? 愛憎を冷やかしてるんだと思ったけど、多分ルチル達は「シャイロックに宛てたメッセージにわざわざハートを付ける暑苦しいおふざけ」だと思ってそうなんだよな……でもシャイロックの反応的には前者な気がするし……。
矜恃と祝祭のプレリュード
祝祭シリーズ・北の国編。
「北の魔法使い達が余計なことをしなければスムーズに終わってたのでは?」と思わずにはいられないけど、この“余計なこと”が彼らにとっては己の尊厳を守るためにしなくてはならないことである……というお話でもあるんですね。
これまで読んできたストーリーのなかでも賢者がいちばん体を張っていましたね。吹雪の中で死にかける描写の臨場感もさることながら、北の魔法使い達の怖さも印象的でした。
北の魔法使いの恐ろしさって、自分のためなら他人を平気で蹴落とせるとかそういう種類だと思ってたけど、仮病は通じないから意図的に体調不良を引き起こす等の思い切りの良さにもあると思います。いざという時に体を張れるって無敵じゃん?
北の魔法使いのなかだとおそらくブラッドリーがいちばん頭がキレるタイプだと思います。ただ、考案する作戦が本当に体を張りすぎてて、そりゃネロもキレるわと思いました。むしろこういうことが30回続いてようやく悟るの、我慢強すぎて泣ける。
ミスラの恐ろしさと強さ、そして美しさがよくわかる回でした。
普段はその言動故に停滞しそうな場面でぶった斬るような行動を取る役回りが多くて、大物なのはわかるけどコメディになりがちだなと感じていたので……ちゃんと彼の恐ろしさと色気が伝わってきたのが印象的でした。
月夜の城のショコラトリー
魔法舎のバレンタイン回。みんなでチョコ作りをしたり、お菓子の魔女にご馳走してもらうお話。
お菓子の魔女がかけた魔法がどれも幻想的で素敵でした。ここに住みてぇ〜〜〜!
みんなが作ったチョコレートが個性的で爆笑した。ネロがいるから勝ち確の東、渡す相手を考えたチョイスながらセンスが光る西、メッセージ付き女児チョコレートの南、発想がフリーダムすぎる中央、やる気のなさゆえにカオスが生まれた北。
シノがお菓子作りをナメきってたり、ルチルとレノさんの温度差がクラスのギャルと振り回される硬派な男子のそれだったのが面白かったです。
魔法使いが性転換できることは知っていたのですが、前の賢者がバレンタインにかこつけてハーレムを作ったのが公式って凄すぎる。私だって魔女になったみんなに甘やかされてーわ。
アーサーまで魔女姿になって賢者に大喜びされていたのを、オズ様はどんな気持ちで見ていたんでしょう。
みんなの魔女姿に興味を示す賢者、男の子〜って感じ。このままギャルゲー始まってもおかしくねーわ。ただでさえ品の良い男とギャル(概念)が多くて、男所帯とは思えん良い匂いのしそうな空間ができあがってるのに……。
「女の子ひとりじゃ気まずいし、いっそのこと男子寮みたいにしちゃえ」と現在は男性賢者にしているのですが、やっぱり女性賢者の方がいいかもな……と思い始めたエピソードでした。
叶わぬ吹雪に願いを灯して
夢の森に住む妖精・フロスティに魅入られた少女を助け出すお話。
親に捨てられた少女・ベルーガの「良い子にしてればいつか両親が迎えに来てくれる」という願いの痛々しさと健気さに胸がぎゅっとなりました。
そして彼女を誘惑したフロスティもまた、オーエン曰く「落ちこぼれ」なんですよね。マッチ職人の娘として生まれながらマッチを綺麗に作れないベルーガに、妖精でありながら力が弱い自分を重ねて惹かれたのかな。
ヒースクリフ、本人は魔法使いとして生まれたことで両親に苦労かけてるのを申し訳なく思ってるし、行く先々で“ブランシェットの貴公子”もしくは“才色兼備の好青年”として羨望の眼差しを向けられるのも重圧なんだろうな……というのがこのお話でも感じられました。
周りは彼を「恵まれている」と思っているからこそ、ヒースがそれ故に傷ついたり苦労していることに気づけないし理解できないんですよね。
あと、サクちゃんis誰!?!?!? 賢者が連れてるこの猫(?)なに???
なにか読むべきものを飛ばしてしまってる気がする。
生徒と別れのコンツェルト
蘇った死者と同時に消えた時計台の謎を調査するお話。厄災の影響ではなく、子ども達に好かれていた先生と、村を見守っていた時計台が起こした奇跡だと結論付けたのが印象的でした。
今回の要は「なぜこんなことが起きたのか?」ではなく、「この事件を受けてこれからどうしていくか?」なんですよね。死者は蘇らないし、時計台だってずっと化けていられるわけじゃないから。この件を残された人々への救いとして見ても、“厄災で突然亡くなった人にさよならを告げて気持ちの整理を付けるための猶予”という意味が強いからこそ、残された生徒達に寄り添えるミチルの存在は大きかったな、と思います。
そして、教師としてのルチルをたくさん見られた回でもありました。生前のクレア先生が生徒達を大切にしていたことを、同じ教師として感じ取る重要な役どころでしたね。
見た目にそぐわずマイペースで豪快なところもあるルチルだけど、こういうところは本当に気が利くというか細やかで、教師として積み上げてきたものを感じました。
泣き虫うさぎと帽子のフロル
突然ひきこもってしまった少女と、彼女を元気づけようとする兄の背中を押してあげるお話。
ルチルの魔法使いとしての強みと、教師として生徒達と築き上げてきた信頼を感じるお話でした。
魔法使いでありながら、その力に頼りきらず1人の人間として寄り添うところから始める。それは人として当たり前のようでいて、人間にも魔法使いにもなかなかできないことなんだと思います。
趣味で絵を描いていたらプロの絵を見て実力差に心が折れてしまった……というのはネットで自分より上の存在がいくらでも見つかる現代社会でもよく聞く話なので、なにかしら創作をしている人なら共感できるところも多いのではないでしょうか。
魔法使いが主役のファンタジーでありながら、ごくごく普通の人間らしい感情や生き方に寄り添う物語……この温かみがまほやくの魅力なのだと思います。
イースターのような衣装と花畑の描写と不思議の国のアリスを彷彿とさせるモチーフの使い方もファンシーで印象的でした。
デジールに深紅のリボンを
ちょうど開催中のイベントストーリー。
ヒースに贈り物をしたいと思ったシノが、何が良いか考えるためにプレゼントばかりを集めた展覧会に行くお話。
ヒースとシノの主従関係とお互いの良いところ、好きなところを改めて見つめ直す大切なお話でした。
自分の立場をわかっているからこそ、シノとは友達らしい関係でいたいし危ないことをさせたくないヒース。もっと主君らしくしてほしいと思いつつも、心優しいヒースが好きだし無理に変わってほしいわけじゃないのも本音なシノ。
ただの主従関係では割り切れない身分違いの友情と、それぞれの長所、本来の立場……ひとつひとつ大切に向き合えば、これらを切り捨てることなく、二人にとってベストな関係がいつか必ず見つかると思います。
今回のお話に登場した魔法使いたち、画家とモデルに共感できるところがある人が多いんですね。異変に取り込まれかけたヒースとシノはもちろん、大切な片割れに取り返しのつかない別れを突き付けてしまったスノウ、魂が砕けた友人を自分好みに育てた(らしい)シャイロック、相棒が姿を消してしまったブラッドリー……。みんなクラウスの話やシノ達の様子を見て思うところがあったんだろうな……。
謙虚で優しいのが本来のヒースの気質だとは思うのですが、己の立場や特性が他人を傷つけかねないものだとわかっているからこそ、一歩退こうとしてしまう部分もありそう。もしかして?と思っていたのですが、今回のお話で確信した。プリパラチェンジすると強気&高飛車になるタイプか……そう考えたら急激に理解が進んだ気がする。
そしてサクちゃんはいったいなんなんだ……。2部以降なのか、なにかのイベストなのか……。
最後に
いろいろ読んでみた感じとしては、全体的に短編の児童書を読んでいるような温かみと表現の幻想的な美しさが特徴的だな〜と思いました。
児童書のなかでも、絵本の世界のような情景と、小学校高学年向けのファンタジー物の児童文学のようなエンタメ感。きらきらした詩的な表現もあったりして、小説を読んでる時と同じ気持ちになりました。こういうのすごく好き。
この後は第2部を読むと思います。育成も楽しみつつ、まったり読み進めていくつもりです。そろそろ、初見の頃とは見解も変わってくる頃だと思うので、答え合わせもしていきたいな。そのときはよろしくお願いします。