本国公開時からずっと楽しみにしていた『プシュパ』の続編。
公開日に舞台挨拶で1回、1週間後に地元で1回鑑賞。2回見てようやく頭の整理ができてきたので、作品の紹介も兼ねて語っていきます。
『プシュパ 君臨』とは
インドの人気シリーズ『プシュパ』の2作目です。
木材密輸組織の下っ端労働者からトップに成り上がった主人公の生き様を、さらに掘り下げる続編となっています。
『紅木』と呼ばれる木材を切り出し、警察にバレないよう運んで売る――きつい肉体労働で、捕まるリスクもある。なのに、その報酬はピンハネされ、労働者の懐には入らない。
これに怒って立ち上がったのが主人公、プシュパ。「俺は変えん、お前が変えろ」と高慢な男だが、その強気な態度と腕っ節の強さ、そして巧みな交渉術で成り上がっていく様を描きます。
現在、1作目の『覚醒』を見る手段は円盤のみ。
ちょっとハードルが高いですが、『君臨』を見て気に入ったのなら1もぜひ。
シリーズの魅力
『プシュパ』の面白いところは、テルグ映画らしいエンタメの基本を押さえつつ、主人公をはじめキャラ造形の繊細さや斬新さを両立している点にある。私はそう思いました。
カーアクションで魅せる、警察の目を掻い潜りながら木材を運ぶ緊張感。
ダイナミックなスローモーションを多用して紡がれる敵対勢力との殴り合い。
現実味が無いのにカッコイイ。
そんなヒロイック&バイオレンスなアクションがテルグ映画(とくにアクション娯楽大作)の醍醐味だな〜と思っています。『プシュパ』もその型を押さえていて大満足でした。
ただ、このシリーズの面白さはそれだけじゃない。
まず、主人公の属性。立場の弱い者を助け、格上の相手にも強気の交渉を仕掛けるプシュパは確かにヒーローです。でも、どれだけ成り上がっても密輸人には変わりないし、私生児として生まれたことによる差別※からは逃れられない。
一歩も退かない強気な態度で成り上がる豪快さの影に、何を成しても何者にもなれないという無情さがつきまとう。
密輸というアングラな世界で成り上がる物語なだけに、主人公の暴力性と善性のバランスが絶妙。文章で延々と説明するよりも見てもらった方が早い。
主人公の恋女房、シュリーヴァッリの存在感も魅力。あのプシュパを尻に敷いている。苗字を持たないプシュパとの結婚を決める強い覚悟を持っている。夫が生まれのことで悪く言われたら、毅然と啖呵を切る。そんな強い女性です。
1も2も、ヒロインにしては恋愛に対してかなり肉食系なイメージを持ったのですが、これも女性の存在をよりリアルに描くという意図があって設定されているようです。(参考記事)
プシュパやシュリーヴァッリの人物像は、今でも格差が残るインドにおけるリアルを反映し、大衆に向き合って生まれたものなのかもしれない。
また、主な敵となるシェーカーワト警視は警官とは思えないダークさとイカレっぷりが魅力。
この作品自体、メインキャストに相応の演技力がないと破綻しかねない映画だと思うのですが、なかでもこの警視はかなり攻めたキャラをしている。演じるファハド・ファーシルの演技力あってのキャラクターだと思います。
ファハド・ファーシルは『ヴィクラム』のアマル役等、他にも日本公開作があるので興味があればぜひ。
今作の感想
面白かった!
4時間近くにも渡る長尺ですが、それだけの見応えがありました。
ただ、長尺ゆえの特別興行扱いなら、上映形式もインターバルありの特殊仕様にしてほしかったです。
同じく4時間近くの尺があった『バーフバリ エピック』は途中休憩があったよ……。
たぶん、休憩無しで4時間か〜と躊躇してる人いっぱいいる。
また、映画の構成的にも休憩前提になっているはず。前半で盛り上げた警察との対決シーンを後半すぐの見せ場で終わらせ、クライマックスは密輸関係ないエピソードを展開する。休憩というクールタイムを挟んだ後、さらにアクセルを踏むことで観客を飽きさせない仕様なんです。
観た人はわかると思いますが、この映画は後半の折り返し地点でいったん決着がつきます。
警視を出し抜いて木材を日本に送り届けて取引を成功させ、得た金で懇意にしている政治家を州首相に就任させるシーンですね。
ただ主人公が敵を出し抜いて成り上がる話だったら、ここで綺麗に終わるはず。
でも、プシュパ自身がまだ救われてないから終われない。良くも悪くも漢くさい話だった1から、一歩進んだ英雄像を描く、2としてのテーマが回収されていない。女性や子どもの尊厳を守る存在として、女神の概念を背負って戦う主人公を描き切っていないのです。だから一般的な尺から伸ばしてでも描いている。
それから、主演のアッル・アルジュンの演技力がマジでレベチでした。
女神に扮して祈りの舞を捧げるシーンでは神がかった演技を披露しています。なんか降りてきてる。
元々、プシュパのキャラクター自体が荒々しく豪快なため、役者とキャラのギャップがある……というのはあります。舞台挨拶では上品に微笑む紳士、という印象だったので、「こ、これがあのプシュパ……?」と驚きました。顔が同じ別人である。
ただ、今作は役者とのギャップで片付けられない、プシュパとしての表情や雰囲気の変化を繊細で大胆に表現していると感じました。
また、高速エンドロール&パンフにも情報がないので確かめようがないのですが、アクション振り付けにキングソロモンさん(RRRやデーヴァラ等に携わっている方)が参加しているのでは?
とくに、クライマックスのアクションシーンにRRRやデーヴァラと同じ味を感じました。
身動き取れない状態から器用に回って飛びかかる、振り回した布で円を描く、倒した相手を踏みつける、三叉槍(?)のような武器の取り回し方等。(そもそもこれがキングソロモンさんの持ち味なのかもわからないのですが……共通して参加している他のスタッフさんの作風かもしれないし。最初はラージャマウリ監督の作風かと思ったのですが、別監督のデーヴァラでも同じものを感じたため、アクション振り付け担当者の持ち味だと考えています)
実はロケ地に行ったことがある……という話
2024年2月、インドのハイデラバードを観光してきました。
目的の一つが、世界最大の映画撮影所と言われるラモジ・フィルム・シティの見学。(ここは観光地として敷地の一部が解放されています。カタカナで検索すると日本人の旅行記が出てきますので、興味があればぜひ)
バスで見学中、現地のガイドさんが「この辺りでプシュパの撮影をしていた」と説明してくれた場所があったのですが……どこだか思い出せない。すでにセットがバラされていたか、裏手のわかりづらい場所だったのか、「ここが……!」みたいな感動はなかった気がします。時期的に2の撮影だろうと思いましたが、1の可能性もある……?
カメラロールを遡ってみたところ、謎のセット裏(?)っぽい場所が見つかったので貼っておきます。

これそうなのかな? そう説明された場所の辺りで何枚か撮った記憶があるのですが……そもそもこれだったかな。
ラモジは見学できる場所だけでもかなり広いから、何気なく撮った写真全部見返す度に「どこだここ」ってなってる。
でも、日本で2が公開されたらロケ地を探してみようと思っていたので、確かめる機会に恵まれて嬉しいです。日本で公開してくれてありがとう。
実際に私が見学したルートが入っているかは不明ですが、これラモジかな?と感じた場面はちょいちょいありました。
まず、後半でカヴェリが攫われた後の街中のシーン。中央分離帯的なやつに見覚えがある。こういうの。

園内の道路は画像のような感じで整備されており、撮影にも使われています。(RRRのタイヤがパンクするシーンが有名だろうか)
なお、ハイデラバード市内の道路とは様子が違います。実際の大通りはメトロ(高架)と並走していたり、高速(有料)道路だったりするし、なにより生活感がある。実際の道路は交通量が多すぎて撮影のために封鎖するのは現実的でないと思う。
また、ダンスシーンやアクションシーン等、大量のエキストラが必要なシーンや撮影に時間のかかるシーンはラモジでセットを組んで行っているはず。確証はない。
プシュパの映像は本当に豪華なので、これを街中の施設を借りて……っていうと許可取るの大変そうなので。
3はあるのか?
衝撃の終わり方でしたが、3はあるのでしょうか?
パンフレットを見た感じ、スクマール監督とアッル・アルジュンは続編制作に対する意欲がありそうです。
プシュパに敵意を持つ勢力はまだ諦めてないので、彼が生きてる限り戦いは続くのでしょうか。(あの終わり方は生きてるか怪しいけど)
密輸成り上がりモノとして大ヒットしたインド映画というと『K.G.F.』があるのですが、こちらは2の最後で3の匂わせがあるものの、物語としては2で実質完結しており3は数年経った今も動きがありません。(ないよね?)
なので、“そういう終わり方”の可能性は普通にあります。
続編が増えるにつれて初期のテーマがブレるのも残念なので、プシュパ自身が救済されたこのタイミングで綺麗に完結してもいいんじゃないかな、と思います。
でも、このまま完結せずに主演と監督が元気な限り続くというのも、希望があってよいと思います。インドのアイコン・スターが演じるヒーローって感じがして。
なんだかんだ続編が公開されたら見に行くと思います。だって、おもしろいから!
まだ見てないよって方も興味があればぜひ劇場で。
インド映画は配信や円盤が確実に出るとは限らないので、行けそうであれば公開中に観てください。
やはりこれも“映画館で見るべき映画”だと思います。

